物理学では「大体」で考える!?
前回「次回から,実際の宇宙に関する研究のアウトラインをお話しします.」と言いましたが,物理学のお話をする上でいくつかの方法がありますので,まずはその方法を紹介いたします.
まずは,「大体」を大事にする方法です.
どういうことでしょう?
雲の動きや海流の具合など,詳しく解析するためにはスーパー・コンピュータが必要です.
そこで必要になるのが,
「大体」を大事にする方法,すなわち,“ある点に注目し,その他のものは無視するという方法”です.
抽象化につながることにもなりますが,ある仮説を立てて考えるのです.
物理学上,ゴジラは存在できない!?
これはなぜでしょう?
まず人間をモデル化します.
人間の標準的なモデル「 さん」を「半径r の球」で表します.
各々の体積を ,および ,
各々の表面積を,および として求めてみます.
やってみてください.
公式よりも忘れてはいけない大切なことがあります.
さんに関しては,
,
,
と表します.
” ”や” “は忘れてしまっても構いません.
,
,
となります.
このことから, さんが実際に存在するのは難しいことが,生物学を知らなくてもわかります.
また,今は単位のことは考えません.単に, をかければ体積が質量に変換できるくらいの認識でいいと思います.単位の重要性についてはこの後のお話で触れるつもりです.
そうすると, さんの体重 および, さんの体重 はどう表現されますか?
,
,
となります.
身体の表面(下面)にかかる圧力を考えるわけです.
圧力をそれぞれ, , としますと,
そして,この比をとってやると,
となり, さんの身体には さんの3倍の内圧がかかることになります.
さんが実際に存在するとしますと,通常の3倍もの内圧に耐えることができないことが予想されます.
生物学的な理由はいくつかあげられるでしょうが,この考察においても1つの可能性を示唆することができます.
そうしますと,最近の映画「シン・ゴジラ」に登場するゴジラの身長と体重は,
身長:118.5 m
全長:333 m
体重:92,000 t
※第4形態時
ですので,実際には存在することができないことが示唆されます.
少なくとも,2本の足で立つことは不可能でしょう.
ガメラ(「ガメラ3」)は,
体長:80 m
体重:120 t
に設定されていまして,
大気圏内航行速度:マッハ3.5(M3.5)
だそうです.
全長・総重量ともオーダー的にはガメラの約1/2~約1/3となっていまして,ガメラの体が航空機の窓ガラスの3倍以上の強度を持っていれば存在できる可能性は残されますが,進行方向に直角の回転軸を持つ回転運動をしながらの飛行は議論の分かれるところです.
SR-71ブラックバードのスペックは以下です.
全長:32.73 m
全幅:16.94 m
全高:5.63 m
最高速度:3,529.56 km/h (1976年7月28日).
※実用機における世界速度記録(超音速ジェット機では,エンジン・パワーの限界ではなく機体が耐えられる限度が最高速度となり,コクピット窓ガラスの強度による限界速度が最高速度となっています.)
巡航速度:M3.2+(フルアフターバーナー)
推定総重量 : 63.5 t+
オーダー・エスティメーション
物理学で大事な数は,累乗(同じ数を順次に掛け合わせること)の形で考えます.
オーダー(桁数)が大事だということでしょうか.
対象としている物理量がどれほどのものか,他の数と比較してどのくらいのものなのかを知ることは大事なことです.
これを,物理量の「オーダー・エスティメーション(オーダーの見積もり)」といいます.
例えば,
という数をみてもピンときませんよね.
このため,「大体」を知るために,以下のように表現します.
こうすることで,細かい数字ではなくて,数字の大きさがよくわかるようになります.
そうそう,今回は宿題を出しますね.
問題:
物理量を表す単位は,最低いくつ必要でしょうか?
そして,その単位は何でしょう?
こっしー君,次回までに考えてみてください.
ではまた.
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和田先生のプロフィール
TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.
こっしー君のプロフィール
TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.
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