未定係数法

和田先生
今日は,前回の続きを未定係数法を使って解いていきましょう.
こっしー君,よろしくお願いします.
こっしー君
では,式(22)に従って,

   (23)

.   (24)

式(22)-(24)を式(11)に代入します.


   (25)

sinおよびcosごとに整理して,


(26)

とは線形独立なので, が任意のとき,

   (27)

よって,

.   (28)

ここで,(28)の左辺係数行列 の行列式を とおきます.

和田先生
この行列式は,行列の性質を決める重要な働きをします.
振動現象をつむぐ,中学校の数学」では,式(25)の後でこそっと出てきていますが,今後何度も出てくることが予想されますのでここで説明します.
この行列式は,二次方程式の判別式 のように,重要な式です.

行列と逆行列

こっしー君
行列式 は,2次の正方行列

,   (29)

において,

   (30)

で表せます.

従って,式(28)より,


.   (31)

和田先生
そうですね.

この によって,行列 の性質がいくつかわかります.そのうちのひとつが, の逆行列(乗法の逆元)の存在に関することです.

2次の正方行列の単位行列(乗法の単位元)を とすると,

.   (32)

の逆行列が存在するとして,それを, とすると,

   (33)

より,

   (34)

となります.式(31)では,

   (35)

ですので,式(34)を用いて の逆行列が求められることになります.

実は,この逆行列の存在を保証するのが,式(35)で示されているように,

   (36)

なのです.
実数などの数体では,逆元は逆数でしたので,もとの数が0でない場合に存在しますが,行列ではそうはいきませんのでこのようにして調べる必要があります.

こっしー君
たとえば,ある実数 に対して,他の実数 が存在して,乗法を行うとき,

   (37)

となった場合は,

   (38)

または,

   (39)

でした.

和田先生
そうです.
ですが,行列の場合は少し様子が異なります.

ある行列 に対して,他の行列 が存在して,乗法を行うとき,零行列を とすると,

   (40)

のとき,

   (41)

または,

   (42)

で成り立ちますが,じつは,式(41),または,式(42)のときだけとは限らないのです.

例を出してください.

こっしー君
例えば,

,    (43)

のとき, は零行列ではありませんが,乗法を行うと,

(44)

となってしまいます.

ここで,注目したいのは, および に関して,

,    (45)

となっていることです.

このようなとき,行列 および を零因子と呼んでいます.
の左零因子, の右零因子とも言います.)

和田先生
こっしー君,ありがとうございます.
今日はこのあたりまでにして,続きは次回にしましょう.
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和田先生のプロフィール

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TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.

こっしー君のプロフィール

越田さん120

TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.