【和田先生のなるほどゼミナール28】振動現象の，自己と“ちょっと変わった”他者（三角波）1

こんにちは．今回から再び振動論の話しをしていきます．

よろしくお願いします．

以前の「振動現象の，自己と他者」では，1自由度振動系を想定し，以下の運動方程式を考えました．（「振動現象の，自己と他者」1回の式(1)）

　　　　　　(1)

このとき，外力として，

　　　　　　(2)

を考え，式(1)を

　　　　　　(3)

として考えました．ここで， は周期的外力の角振動数です．この周期 で外力は周期変動をします．

今回は，加えられる外力が，周期 を持つのですが，その関数形が初等関数では，すぐには表せない場合について考えます．たとえば，


のような時系列変動波形の場合は，周期 はもちますが，初等関数で簡単には表現できません．これが，今回お話しする「ちょっと変わった」他者になります．

どのようにしていきましょうか．周期的ではありますが，この波形を，初等的関数 “”，“”，“” を用いて表すことは簡単にはできないように思います．

データとして， の値があれば，専用のソフトを用いることができる場合があります．ここではできるだけ解析的に解くことを考えたいので，このような場合は，一般的には，外力 をフーリエ級数展開することで解析的に式(1)を解くことができます．

フーリエ級数ですか．
フーリエは人の名前で，Jean Baptiste Joseph Fourier（ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ）といい，1768年3月21日－1830年5月16日に活躍した，フランスの数学者・物理学者でしたね．

固体の熱伝導についての研究より熱伝導方程式（フーリエの方程式）を導きだし，この方程式を解くために「フーリエ解析」という方法を作りだしました．フーリエ解析は複雑な波形を取り扱いやすくすることができます．そのため，振動や波動に関連した研究のみならず，データ処理など多くの分野で利用されており，調和解析という数学の一分野を形成するまでになっています．

さすが，よく知っていますね．
そうですね．この「フーリエ解析」はなかなか興味深い分野です．「熱伝導解析」や「波動解析」については，別の機会にお話ししましょう．

「フーリエ級数」は応用範囲が広く，特に，微分方程式を解くときに力を発揮してくれます．では，フーリエ級数について説明してください．

わかりました．

（定義）

関数 が区間 で定義され，この区間の外では， を任意の整数として，

　　　　　　(4)

が成り立つ関数，すなわち， が周期 の周期関数であるとします．このとき， のフーリエ級数展開は，以下になります．

　　　　　　(5)

ここで， を任意の実数とするとき，

　　　　　　　　　(6)

です． や をフーリエ係数と呼んでいます．

ありがとうございます．

ここで，いくつか注意点がありますが，次回ということにしましょう．数学的に厳密なお話しではなく，応用上，気をつけなければならない点に絞ってお話しします．

では，宿題を出しておきましょう．
フーリエ級数が収束するための十分条件に，ディリクレの条件というものがあります．それは，どのような条件でしょうか．

わかりました．次回までに調べてみます．