ハンマリング加振機構[1]については,以前述べています.今回は,ハンマリング加振機構を用いて行ったコネクタの電気接点の劣化実験の1例を紹介します.他の例については,いくつか参考文献をあげておきます[2],[3],[4].
実験条件
実験対象: すずめっき(下地: 銅合金)コネクタを両面実装ガラスエポキシ小型ユニバーサル基板(サンハヤト社製ICB-93SGH)に,図1のような位置にはんだ付けしたもの
基板の加振点からコネクタまでの距離: 約 30 mm
ピンごとの摺動摩擦力: 約 1.6 N
(日本電産シンポ社製デジタルフォースゲージFGP-1で測定された,メス側にオス側が押し込まれるときの力)
コネクタの接続: 10ピンを直列接続
(デイジー・チェーン: ロガーのチャンネル数のため)
実験対象コネクタへ流す定電流: 10 mA
(信号系統を想定)
コネクタ電圧記録機器: キーエンス社製データロガーNR-2000
試験期間: 約4か月
加振周期: 0.25 s
(ヒトの走行時の1歩の周期に相当,約4か月の加振で毎分8回くらいの衝撃が10年ほど続いた場合に相当)
サンプリング周期: 0.25 s
(加振周期と同じ値とした)
加振角度(加振初期角度): 10°
加振加速度計測値: 約 150 G
(小野測器社製加速度ピックアップNP-3572(ヘッド質量 8.1 g)で計測)
ただし,劣化実験中は加速度ピックアップを取り付けません.他の実験の,小野測器社製加速度ピックアップNP-2106(ヘッド質量 0.2 g )での計測結果をもとに推測すると,加速度ピックアップを取り付けない状態での加速度は,300 G 以上になる可能性が高いと考えられます.
使用加振機: 試作版ハンマリング加振機構
図1: 基板上のコネクタの配置
実験結果
加振を行った結果を図2~図7に示します.
図2:コネクタ1の電圧
図3:コネクタ1の電圧 (縦軸拡大)
図4:コネクタ2の電圧
図5:コネクタ2の電圧 (縦軸拡大)
図6:コネクタ3の電圧
図7:コネクタ3の電圧 (縦軸拡大)
仮にここでは,明らかな電圧上昇の有無を0.025 Vで判断することとします.コネクタ1の電圧(図2,図3)を見ると,2500万回あたりで明らかな電圧上昇有りとなっていることがわかります.また,コネクタ3の電圧(図6,図7)を見ると,図6ではわかりませんが,図7では1800万回あたりで明らかな電圧上昇有りとなっていることがわかります.コネクタ2の電圧(図4,図5)を見ますと,図4ではコネクタ1やコネクタ2とは異なり,電圧上昇が無いように見えます.しかし図5を見ますと,4250万回あたりでようやく明らかな電圧上昇有りとなっていることがわかります.
参考文献
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こっしーのプロフィール
TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.
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- ハンマリング加振機構, ハンマリング微加振装置, 加振, 劣化実験, 振動, 接点劣化, 接触抵抗, 電気接点