超能力を持てるとしたら?


和田先生
こんにちは,和田です.
前回の宿題,
【問題】
筒井康隆の作品「七瀬ふたたび」などの “七瀬3部作”に登場する“火田 七瀬(ひた ななせ)”のもつ超能力は次のうちどれでしょうか?

①ひとの心を読む能力
②未来を予知する能力
③時間を移動できる能力

の答えはわかりましたか?

こっしー君
はい,正解は,

①ひとの心を読む能力

ですね.

和田先生
正解です.

作品の登場人物は,それぞれこんな能力を持っていましたね.

・火田 七瀬(ひた ななせ):ひとの心を読む能力
・ノリオ:ひとの心を読む能力
・岩淵 恒夫(いわぶち つねお):未来を予知する能力
・漁 藤子(すなどり ふじこ):時間を移動できる能力
・ヘンリー:意志の力だけで物体を動かす能力
・西尾:透視能力

こっしー君
実際に超能力を持っている人を見たことはありませんが,お話として面白く読めました.
和田先生
現在も,繰り返し超能力に関する作品が登場するのは,みなさんがこの分野のお話に興味があるからではないでしょうか.

こっしー君だったら,どんな能力を持ちたいですか?

こっしー君
ええと,私でしたら「未来を予知する能力」でしょうか.
いろいろと先を見越して準備ができそうですので.

ハッブル定数のオーダー見積り

和田先生
なるほど.

では,そろそろ話を戻しましょう.ハッブル定数についてです.
オーダー見積もりをやってもらえますか?

こっしー君
はい,わかりました.

: [ T ]   (30)

ですので,わかりやすく, にしてみます.

   (31)

(32)

: [ T ]

(33)

和田先生
ハッブル定数は,時間の逆数の次元を持っていますね.

この分母の という数字は,つまり何年ですか?

こっしー君
100億年になります.

ちなみに,プランクの観測による から計算すると149億年.
を使いますと,138億年になります.

和田先生
そうですね.

ハッブルの法則は,銀河同士の膨張速度とその距離の関係を表しているだけなのですが,この「100億年」は宇宙の年齢にほぼ等しいことになります.
これを「ハッブル時間」と呼んでいるそうです.

同様に,物理的意味はないですが,先の「わたしたちの宇宙のみじめな最期7」で,時間で距離を表すことができたように,光速を乗じた「100億光年」を「ハッブル距離」と呼んでいます.
ハッブル定数は,われわれの宇宙の物理定数ということになります.

もしも我々の宇宙以外の宇宙があり,そこに知的生命体がいたとして,彼らに我々の宇宙のことを紹介するときに真っ先にプレゼンすべきなのは,この定数かもしれません.

こっしー君
ただ,この話は「距離」と「速度」の定義が問題になります.

Wikipedia(ハッブルの法則)では,
「ハッブルの法則が成り立つ「距離」とは,共動距離,つまり,その銀河の現在位置までの距離である.「速度」とは,その時間微分である.観測上,遠方の天体ほど,ハッブルの法則に従わなくなる.これは光速が有限なため観測上遠方の天体が過去の距離(宇宙論的固有距離)と速度を表し,かつ過去のハッブル定数が現在のハッブル定数と異なるからである.」
としています.

和田先生
式で表してみてください.
こっしー君
はい,
の代わりに, を用いますと,

これより,変数分離して解きますと,

となります.

および は積分定数です.

仮に, が定数 だとしても,

となり,距離は時間の関数になって,文字通り,指数関数的に増加してしまいます.

が小さいうちは(すなわち,距離が近いうちは),定数近似が成り立ちますが,時間がたちますと難しくなります.
天体の後退速度は光速を超えないという縛りとは反りがよくないことになります.

和田先生
面白いことを言いますね.
この膨張宇宙を初めて理論的に提唱したのは,実はハッブルではありません.
こっしー君
えっ?
和田先生
これとは別に、一様等方の宇宙についてのアインシュタインの一般相対性理論の方程式からアレクサンドル・フリードマンが導き出した宇宙モデルには,膨張する宇宙が含まれていました.
ハッブルの発見は、このモデルを実証したものになります.

一様等方の宇宙で膨張を考えると,以下のようになります.
各青丸がある時刻の銀河団だとします.

銀河団

和田先生
これより,ある時間がたった少し先の銀河団を,次の赤丸とします.

銀河団

和田先生
これを,左上が我々の銀河だとして重ねますと(紫が我々の銀河),

銀河団

和田先生
正にハッブルの法則に従って,遠くの銀河が速く遠ざかっている(すなわち,遠くにいる)ことが示されています.

また,われわれの銀河が別の場所(紫が我々の銀河)だとして重ねますと,下図のように,

銀河団

和田先生
やはり,我々の銀河を中心に,ハッブルの法則通りの挙動がうかがわれます.
しかし,宇宙自身は,等方的に膨張しているだけなのです.
こっしー君
もっと言いますと,宇宙には中心などないことになりますね.
和田先生
ここで,ひとつ,宿題を出しましょう.
【問題】
赤方偏移が観測される天体の1つにクエーサーというものがあります.
準星または準恒星状天体ともいいます.
このクエーサーの1つの「3C 147」という天体は,赤方偏移の値が0.545とされています(Wikipedia(3C 147)より).
このクエーサーまでの距離はいくつでしょう?

次回までに考えてみてください.

こっしー君
はい,考えてみます.
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和田先生のプロフィール

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TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.

こっしー君のプロフィール

越田さん120

TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.

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