判別式が意味するもの!?

和田先生
前回は, 判別式が,

のとき 過減衰,

のとき 臨界減衰,となることをお話ししました.

今回はいよいよ,振動現象が現れるお話です.
のときは,二次方程式で解が実数でない複素数のときでした.二次方程式における複素数解については,直感的に理解するのが少し難しいと思います.かろうじて二次関数の性質を説明するときに役立ちますが.ところが,実際の振動論で最もよくあらわれるケースがこの複素数解のときなのです.少し不思議ですね.

では,主役の登場です.
こっしー君,よろしくお願いします.

こっしー君
では説明します.

(Ⅲ) のとき

このときは,すなわち,

のときで,一般解は,前回の式(10)と同じで,

   (16)

となります.

ここで,の中が負なので,虚数単位 を用いて表現方法を変えます.

すなわち,

とします.

虚数単位は,

です.不思議な世界に入っていく感じがします.

式(16)より,

.   (17)

ちょっと困りました.

  や 

はどうしたらいいのでしょう.

オイラーの公式:指数関数から三角関数が出てくる!?

和田先生
これは,オイラーの公式と呼ばれているものを用います.
すなわち任意のに対する,

   (18)

を用います.
この公式は不思議な魅力のある式で,色々な方法で証明が試みられています.数学の一般書やウェブサイト(Wikipediaなど)を見てください.

この公式が最も不思議なのは, を円周率として,

を代入したときです.そうすると,式(18)は,

  (19)

   (20)

となります.

数学で出てくる,重要でかつ不思議な無理数 ,先ほど出てきた虚数単位 ,および最も身近な整数(加法に関する単位元,すなわち零元)と(乗法に関する単位元)が出てきて,それらが単純な等式で結ばれています.
数学は発見なのか発明なのかの議論がありますが,この式を見ていると発見だと思いたくなります.

少し横道に逸れました.
このオイラーの公式(18)を用いると

   (21)

   (22)

となります.
続けてください.

振動現象をつむぐ,虚数単位!?

こっしー君
式(21)式(22)より,式(17)は,

.   (23)

ここで,

, .   (24)

式(23)に初期条件を用いると,

,    (25)

となり,

.

すなわち,

, .   (26)

和田先生
あれ,式(26)を見ると,は実数になっています.
ところが,式(24)で定義されています.
この式では,が虚数になっているように見えて気持ち悪いですね.
こっしー君
それは,実際に計算してみると解決します.

式(24)より,

.

式(26)より実数なので,が共役な複素数だったのです.

これより,が実数,が純虚数となるので,は実数になります.結構きわどい気がしますが.

和田先生
よかった.
続けてください.
こっしー君
式(23)(26)より,三角関数の合成を行います.

ここで,

,

です.

変位 の時間変化を図に示します.これは減衰周期運動であり,減衰自由振動と呼びます.最も多くみられる振動現象がこれです.

減衰自由振動

和田先生
私たちは,この振動を主に研究しています.高等学校で学習する虚数(複素数)の概念を使うことで,この現象を解析できます.基礎というのは,偉大なものですね.

ちなみに,電気回路において類似の振動現象があります.制御工学でも二次方程式は出てきます.また,別の機会にでもお話ししましょう.
今回は,式(2)において外力としましたが,次回はでない場合についてお話したいと考えています.

この記事と合わせて読みたいページ

greek_footer

bnr_chokobana

product-hammering_03


TMCシステムの研究・開発の最新情報を見る

和田先生のプロフィール

3pr_wada_sp

TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.

こっしー君のプロフィール

越田さん120

TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.