ドップラー赤方偏移とは

宇宙

和田先生
こんにちは,和田です.
今日は,前回の続きで「ローレンツ変換を使って、赤方偏移を導く」ところからでしたね.
それでは,こっし―君,よろしくお願いします.

こっしー君
はい,わかりました.
光源の座標系で考えます.

   (8)

ローレンツ変換すると,変換された先では,

   (9)

となります.

ここで,

,    (10)

で,ローレンツ因子と呼ばれています.

は真空の光速度, は観測者と光源の 軸方向の相対速度です.

に対して, が十分小さいときは,

   (11)

とでき,

変換先では,

   (12)

となりますので,ガリレイ変換を含んでいることがわかります.

和田先生
時空においては、どう考えますか?
こっしー君
時空においては,時間と空間は独立ではないので,以下の図を使って考えます.

赤方偏移

こっしー君
変換前(光源と同速度の座標系)で の時間が,変換後(観測者と同速度の座標系)で になったとします.

および は光の波の周期と等しい時間とします.

図は光源と同速度の座標系を示しています.

図の緑の実線観測者の位置を示しており, 軸からの傾きはこの座標系に対して相対速度 を持っていることを表します.

図では,光源が観測者から見て負の方向にあり, が正ですので,光源から遠ざかっていることを示しています.

すなわち, です.

光の波1山目の位置を青の破線で,2山目の位置を赤の破線で示しています.

図より,

   (13)

.   (14)

(13)と式(14)の2つめの等式より,

   (15)

.   (16)

よって,

   (17)

.   (18)

さらに,

.   (19)

観測者とともに運動する系では,ローレンツ変換されて,
また,式(9)および(10)より時間成分で考えると,
観測者にとっては,光の波の1山目が到達してから2山目が到達するまでの時間が,光の波の周期 となるので,

   (20)

.   (21)

よって,

   (22)

   (23)

となります.

ちなみに,途中計算は省きますが,ローレンツ変換後の座標系,つまり観測者と同速度の座標系では,以下のような図になります.

赤方偏移2

こっしー君
周波数 および は,周期の逆数なので,

   (24)

となります.

あとは,波長 および に直せばいいので,

   (25)

   (26)

   (27)

よって, より大きくなります.

すなわち,波長が伸びますので,赤色の方に偏移します.

   (28)

「赤方偏移」の量と定義しています.

実際には,天体などの光源の可視光スペクトルに見られる吸収線(暗線:フラウンホーファー線)のシフトを測定することで光源の視線方向の後退速度がわかります.

そして,この速度とハッブル定数を使うと,天体までの距離がわかります.

和田先生
そのとおり.
ありがとうございます.

ハッブルの法則

和田先生
ハッブルらは,様々な銀河までの距離とその銀河のスペクトルを調べ,

ほとんど全ての銀河のスペクトルに赤方偏移が見られること,

および,

赤方偏移の量は遠方の銀河ほど大きいこと

を発見しました.

これを「ハッブルの法則」と呼んでいます.

天体の相対速度(後退速度)を ,ハッブル定数を ,その天体までの距離を とすると,

   (29)

ハッブル定数は,次元は [ T ] で,
単位としては便宜上, ] が用いられます.

2014年の時点で,最も正確な値は、プランクの観測による

67.15±1.2

だそうです.
(Planck Reveals an almost perfect universe:European Space Agency).

この「ハッブル定数」が,【和田先生のなるほどゼミナール16】わたしたちの宇宙のみじめな最期5で出した宿題,

宇宙のお話をするときに,欠くことのできない重要な物理定数がもう一つあります.
この定数は, [ T ] で表せます.
その定数とはなんでしょうか.

の解答になります.

ハッブル定数は,我々の宇宙そのものだといわれることもあります.

この事象は、銀河を出た光が地球に届くまでの間に,空間自体が伸びて波長が引き伸ばされるためであると解釈でき,宇宙が膨張していることを示すと考えられています.

こっしー君
宇宙は,以前は定常的で,未来永劫変わらないと考えられていました.

我々の宇宙が膨張しているのなら,その時間を遡行していくと,宇宙には「はじまり」があったということになりますね.

和田先生
そうですね.
現代宇宙論は,今,大変に面白い時期に来ているようです.

ハッブル定数の話の前に,ちょっと,脱線します.「時間を遡行していく」という言葉に引っかかりました.
よく使われる表現としては,「タイム・トラベル」ですね.

この分野の作品は,小説・映画・TVドラマ・コミック・アニメ・ゲームと多岐にわたっており,今回のゼミではとても総括できるスペースはありませんが,気になったものだけ次回,触れてみたいと思います.
いつかこれらの分野を総括できればと考えています.

こっしー君
「タイム・トラベル」ですか!
和田先生
さて,ここで1つ宿題を出しましょう.

【問題】
タイムトラベル作品の金字塔「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画作品のPART2では,主人公が30年後の未来にタイムトラベルします.
さて,その30年後の未来とは西暦何年でしょうか?

①2015年
②2020年
③2025年

次回はこのお話から始めることにしましょう.

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和田先生のプロフィール

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TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.

こっしー君のプロフィール

越田さん120

TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.

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