数学・物理学で使用するギリシャ文字
こんにちは,和田です.
数式では,アルファベットの他にギリシャ文字をよく使いますので,以下に数学や物理学における使用例を含めて一覧を掲げます.
読み方(例) | アルファベット表記 | ギリシャ文字 | 使用例 |
---|---|---|---|
アルファ | alpha | ||
任意定数,角度(平面角),位相 | |||
ベータ | beta | ||
任意定数,角度(平面角),位相 | |||
ガンマ | gamma | ガンマ関数 | |
減衰比,比熱比,任意定数,角度(平面角),位相 | |||
デルタ | delta | 他の文字の前につけて微小(変化)量を表す | |
クロネッカーのデルタ,ディラックのデルタ関数,微小(変化)量,微小な数 | |||
イプシロン | epsilon | ||
誘電率,ひずみ,微小な数,誤差 | |||
ジータ,ゼータ | zeta | ||
ゼータ関数,未知数,複素数,減衰比 | |||
イータ | eta | ||
未知数,ミンコフスキー計量,粘性係数(粘度) | |||
シータ,テータ | theta | ||
角度(平面角),位相,母数,温度 | |||
イオタ | iota | ||
恒等写像 | |||
カッパ | kappa | ||
比熱比,曲率 | |||
ラムダ | lambda | 宇宙定数 | |
波長,振動数比 | |||
ミュー | mu | ||
透磁率,摩擦係数,粘性係数,母平均,立体の書体で10-6を表す接頭辞(マイクロ) | |||
ニュー | nu | ||
振動数(周波数),ポアソン比,動粘性係数 | |||
グザイ | xi | ||
未知数、座標変換パラメータ | |||
オミクロン | omicron | ランダウの記号 | |
ランダウの記号 | |||
パイ | pi | 立体の書体で積の記号(直積) | |
円周率、浸透圧 | |||
ロー | rho | ||
密度,電気抵抗率,曲率半径 | |||
シグマ | sigma | 立体の書体で総和の記号 | |
母標準偏差,垂直応力 ,電気伝導率(導電率) | |||
タウ | tau | ||
時間,時刻,時定数,せん断応力 | |||
ウプシロン | upsilon | ||
ファイ | phi | 磁束 | |
角度(平面角),位相,波動関数 | |||
角度(平面角),位相,波動関数 | |||
カイ | chi | ||
カイ二乗分布,電気感受率,磁化率 | |||
プサイ | psi | 波動関数 | |
波動関数 | |||
オメガ | omega | 立体の書体で電気抵抗の単位オーム、立体角 | |
角振動数(円振動数),角速度 |
数式にひそむ,古代ギリシャ
ちなみに,「数学」は,英語では,mathematics ですが,ギリシャ語では,Μαθηματικά と書くそうです.気息記号を無視して,Symbolのフォントでギリシャ文字を書くときに対応するアルファベットで表記しますと,Maqhmatika になります.そっくりですね.もっと掘り下げると,英語の歴史がわかりそうです.
日本語の場合,中世の表記は,高等学校の「古典」で学びます.意味まで正確に知るのは,相応の学習が必要ですが,なんとか発音することはできます.
ところが,英語の場合は,中世の表記は読めません(発音すらできません).それだけ英語が,大きく変化していることが理由だそうです.
このことは別の機会にお話ししますが,以下の本が参考になると思いますよ.
(井口篤・寺澤盾「英語の軌跡をたどる旅」放送大学教育振興会,寺澤盾「英語の歴史 過去から未来への物語」中央公論新社)
数式にギリシャ文字が使われる理由
数式にギリシャ文字が多く出てくる理由は諸説ありますが,以下のようなことがあげられます.
(1)ギリシャ語とラテン語はヨーロッパにおける古典であり,文学・哲学を含めてこれらの言語は教養として位置づけられていた.ラテン語は英語のアルファベットと同じなのでギリシャ語の文字が用いられた.
(2)変数・定数にアルファベットa–zを使ってしまっていて,足りなくなったので,他の文字で意味のあるものを用いた.
(3)数学(ユークリッド・ピタゴラス・アルキメディス)などの始まりは古代ギリシャといっても過言ではなく,数学という道を切り開いた古代ギリシャの数学者たちに敬意をこめ,ギリシャ文字を用いた.
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和田先生のプロフィール
TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.