クライマーズ・ハイ

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和田先生
前回は,内田幹樹のエッセイ「機長からアナウンス」(新潮社)のお話をしたところで終わりましたが、“著者が新聞記者時代に実際に遭遇した事故”をヒントに書かれた小説に,横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」(文藝春秋)があります.
こっしー君
「クライマーズ・ハイ」は,映画やドラマにもなりましたね.
映画は堤真一,ドラマは佐藤浩市が主演でした.
和田先生
横山秀夫の「64(ロクヨン)」(文藝春秋)という小説も,佐藤浩市主演で映画化されました.
こっしー君
「64(ロクヨン)」は,ピエール瀧主演でドラマ化もされましたね.
和田先生
ピエール瀧といえば,今年7月に公開された映画「シン・ゴジラ」にも出演しています.
「シン・ゴジラ」は,東宝製作のゴジラシリーズの第29作にあたり,「ゴジラ FINAL WARS」以来,約12年ぶりの日本製作版です.
こっしー君
和田先生は,ゴジラなどの怪獣映画や,ウルトラマンシリーズもお好きでしたよね.
和田先生
こっしー君,私のことをよく知っていますね.また別の機会にでもブログに書きたいと思います。
ちなみに「クライマーズ・ハイ」とは,どういう意味かわかりますか?
こっしー君
はい.登山者の興奮状態が極限まで達し,恐怖感が麻痺してしまう状態のことだったと思います.
和田先生
そうです.ちなみに,「ランナーズ・ハイ」「ワーカーズ・ハイ」というものもあります.

数学と物理学の関係

和田先生
堤真一は,映画「クライマーズ・ハイ」「容疑者Xの献身」において,それぞれ第32回日本アカデミー賞優秀主演男優賞,優秀助演男優賞を同じ年にダブル受賞しています.
こっしー君
堤真一の原点は舞台俳優だそうですが,最近ではテレビ・映画での露出も増えていますね.
和田先生
「容疑者Xの献身」は,原作が東野圭吾で,ガリレオ・シリーズの第3弾です.
東野圭吾は本作によって,第134回直木賞を始めとした,数多くの賞を受賞しています.
こっしー君
映画では,物理学者の湯川学を福山雅治,対峙する数学者の石神哲哉役を,この堤真一が演じていましたね.
和田先生
原作で印象的だったセリフがあります.
ある刑事に,

「先生のお作りになる問題なら難しそうだ.」

と言われたのに対し,数学者の石神哲哉は,

「難しくはありません.ただ,思い込みによる盲点をついているだけです.たとえば幾何の問題に見せかけて,じつは関数の問題であるとか.」

と答えています.

こっしー君
この問答がきっかけで、湯川学は事件の犯人を確信したのですよね.
和田先生
そうです.
また映画では,物理学者の湯川学が,

「そもそも,数学者と物理学者とでは,答えにたどり着くまでのアプローチが正反対だ.物理学者は,観察し仮説を立て実験によって実証していく.しかし,数学者は,すべて頭の中でシミュレーションしていく.」

「つまり,数学者は,問題を様々な角度から見ることによって,謎の正体をあきらかにしていくわけさ.」

と言っています.

こっしー君
数学物理学の関係をうまく言い当てていますね.
和田先生
これに倣うわけではありませんが,このゼミでのお話も,前回までは数学をベースにした機械力学のお話でしたので,数学的な色合いが濃いものになったのですが,今回は物理学的な色合いの濃いものにしたいと考えています.

ところで,こっしー君.数学と物理学における,最も大きな違いは何だと思いますか.

こっしー君
なかなか難しい問いですね.
私見を言うのよりも,次の本を紹介したいと思います.
こっしー君
竹内薫の「99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」(光文社)という本があります.
この中で,「反証可能性」について触れられています.
「反証可能性」がないのが数学で,「反証可能性」があるのが物理学というわけです.
和田先生
そうですね
数学で「証明」された「定理」は,その証明が誤りでない限り覆りません
が,物理学で「証明」された「仮説」は,覆る可能性を残しています
だから,ほとんどの内容が「定理」になれず「仮説」なのでしょう.

同じ証明でも,数学における「証明」と物理学における「証明」とは,同じではないのです.

こっしー君
竹内薫は,サイエンスライター・作家ですが,「湯川薫」名義で小説も執筆しています.
また,NHK Eテレ「サイエンスZERO」という番組のナビゲータもしています.
和田先生
この番組で,こっしー君が面白いと思った特集はありますか?
こっしー君
宇宙関連ですと,2015年10月18日に放送された「No.521徹底解説!“宇宙の果て”に迫る!」が印象に残っています.

“宇宙の果て”はどうなっているのか.そこには壁があるのか・行き止まりか・無限に続いているのか.観測と理論から研究が進められています.
空間の歪みからその問題を考察している研究を紹介した番組だったと記憶しています.

和田先生
非ユークリッド幾何学を使った研究ですね.
私もこの回は「実に面白い」と感じました.
こっしー君
どこかで聞いたことのあるセリフですね.
和田先生
ガリレオ・シリーズに登場する湯川学のTV版の常套句でした.

脱線してすみません.
次回からは,宇宙に関する研究のアウトラインをお話しします.

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和田先生のプロフィール

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TMCシステムの研究責任者.電子情報通信学会の会員.
電気接点の劣化現象などに関する論文を多数執筆.
プライベートでは,ギター演奏・料理・読書と幅広い趣味を持つ.

こっしー君のプロフィール

越田さん120

TMCシステムの研究担当者.電子情報通信学会の会員.
得意分野は数学と機械工学.
趣味は読書.特技はペン習字.

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